ねむるだけ

主に読んだ本について。ほぼ全記事ネタバレを含みます。

終末のフール

感想

舞台を同じくした、『終末のフール』と韻を踏んだタイトルの八つの短編から成っている。

緊急事態と平穏な毎日を書く(とわたしは思っている)伊坂幸太郎作品の中で、緊急事態の中の平穏な毎日を描いている珍しい作品。

個人的には『太陽のシール』が一番好きだった。

子供が欲しい夫婦のお話。しかし小惑星の衝突を控えているため、今子供を授かったとしても、その子は大人になれないということに葛藤する。

夫婦は二人ともオセロを好んでするのだが、その光景もほほえましく可愛らしい。

そしてそれは「子供と一緒にオセロをする」という夢へ変わるが、三人だったら一人余るな、などと心配する姿もまた愛おしい。

最後のシーンで、授かった子供が双子であるとわかり、「二組でできる」と喜ぶシーンでは、回収の美しさも感じられる。

八つすべてが面白いので、ぜひ読んでみてください。